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インプラント治療と喫煙のリスク
2026/01/13
〜より安全・長持ちする治療のために知っておきたいこと〜

写真:インプラント周囲炎により溶けてしまった骨
① インプラントと喫煙の関係 — 基本の“仕組み”を理解する
インプラント治療は、失ってしまった歯の代わりにチタン製の人工歯根をあごの骨に埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。近年では噛み心地の改善、審美性、周囲の健康な歯に負担をかけないことなどから、世界中で広く選択されています。
しかし、インプラント治療を成功させるためには骨とインプラントがしっかり結合する(=オッセオインテグレーション)ことが絶対条件です。ところが、ここに 喫煙 が大きな影響を与えることが、臨床的にも多くの研究で報告されています。
例えば、Journal of Clinical Periodontology に掲載された研究では、喫煙者は非喫煙者に比べてインプラント周囲炎(インプラント周囲の炎症)の発症リスクが 2〜4倍 高くなると報告されています(Cortellini et al. 2017)。これが意味するのは、喫煙者ではインプラントが長持ちしにくい可能性がある、ということです。
② なぜ喫煙が悪影響を与えるのか?
喫煙がインプラント治療の結果に影響するメカニズムは複数あります。以下のような要素が関与していると考えられています。
❶ 血流が悪くなる
ニコチンや一酸化炭素は血管を収縮させ、血液の流れを悪くします。骨や歯肉は血液から酸素と栄養を得て修復するため、血流低下は治癒を遅らせ、感染に対する抵抗力を弱めます。
❷ 免疫反応の低下
喫煙は免疫細胞の働きを抑制し、細菌感染を起こしやすくします。インプラント周囲炎のリスクが高まるのはこのためです。
❸ 骨代謝の阻害
喫煙が骨の形成を阻害することは多くの研究で示されており(Michaëlsson et al. 2003)、インプラント周囲の骨とインプラントがしっかり結合するオッセオインテグレーションにも悪影響を与えるとされています。
こうした影響が重なり、喫煙者ではインプラントの定着率が低く、長期的な維持が難しくなる傾向があるのです。
③ 喫煙の量とリスク — “どれくらい吸うとダメ?”
患者さんからよく質問されるのが「どれくらいの喫煙量が影響するのですか?」という点です。結論から言うと、“完全にやめること” が最も望ましいですが、科学的には喫煙量が多いほどリスクが高くなるというデータがあります。
ある研究では、1日10本以上の喫煙者は、10本未満喫煙者に比べてインプラント周囲炎のリスクが約2倍になるというデータも報告されています(Bain & Moy. 1993)。これは、タバコ内の化学物質が体内に蓄積しやすく、しかも慢性的に血流・免疫系にダメージを与えるためです。
また、喫煙歴が長いほどリスクが積み重なります。10年以上の長期喫煙者では、短期間の喫煙者と比較して成功率が明らかに低くなるという報告もあります。
④ 禁煙で変わるリスク — やめるだけで違いが出る!
ここで朗報があります。喫煙を完璧にやめることでリスクを大きく低減できるという点です。
禁煙による改善効果は複数の研究で示されています:
- 血管機能の改善が早期に見られる
- 免疫反応が正常化に向かう
- 骨折治癒・傷の治癒能力が上がる
これらはすべてインプラントの成功にとってプラスです。実際に、一定期間禁煙した患者ではインプラント周囲炎の発生率が下がるという報告もあります(Salvi et al. 1997)。
ですからインプラント治療を検討している場合、可能な限り禁煙することが最善のリスク管理になります。
LUSIA DENTAL CLINICでも、インプラントを選択される患者さんには徹底した禁煙指導を行なっています。
⑤ 喫煙者はインプラントできないのか?
「喫煙者でもインプラントは絶対にできない」というわけではありません。医療は個々のリスクを評価しながら最適な治療を選択するものです。
ただし喫煙者には次のような説明が必要です。
- インプラント治療の成功率が低くなる可能性がある
- 治療中・治療後にトラブルが出る可能性が高い
- 長持ちさせるためには禁煙が有利
ここで大切なのは、患者さん自身に自分のリスクを理解してもらうことです。一方的に禁止するのではなく、エビデンスに基づいた説明を通じて選択肢を提示することが、医療者としての責任でもあります。
⑥ 日常生活でできるリスク軽減策
喫煙以外の生活習慣もインプラントへの影響があります。リスクをさらに下げるためのポイントをここで紹介します。
✔ 口腔衛生の徹底
- 毎日のブラッシング
- 歯間ブラシ、フロスの使用
- 定期的なプロフェッショナルクリーニング
喫煙者は動脈硬化や免疫力低下で感染リスクが高まるため、虫歯・歯周病のコントロールが特に重要です。
✔ 定期検診の継続
インプラント周囲炎は早期発見・早期対応が鍵です。喫煙者は特に定期検診の頻度を高めることが推奨されます。
まとめ — インプラントを成功させるために知っておくべきこと
インプラント治療は素晴らしい治療ですが、成功率や長期的な維持にはさまざまな因子が関与します。その中で 喫煙は最も修正可能であり、かつ大きなリスクとなる要素 です。
- 喫煙は血流・免疫・骨代謝にマイナスの影響
- 喫煙量・喫煙歴が長いほどリスク増加
- 禁煙することでリスクが大きく低減
- 喫煙者にも選択肢はあるが、説明と理解が重要
インプラントを検討する際には、ぜひ 生活習慣全体を見直す視点 も取り入れてください。それは単に治療の成功だけでなく、全身の健康につながる大切な考え方です。
LUSIA DENTAL CLINICでは、多くの実績と経験に基づいた高度なインプラント治療が可能です。
ぜひ一度ご相談ください。