骨造成

骨造成(GBR)とは

インプラント治療を希望されても、顎の骨の量や厚みが足りないために治療が難しいと診断されることがあります。GBR(Guided Bone Regeneration/骨再生誘導法)は、そのような場合にインプラントの土台となる骨を増やすための治療法です。
歯周病の悪化や歯を抜いた後の骨の吸収によって失われた部分に、ご自身の骨(自家骨)や骨補填材を置き、その上を「メンブレン」という特殊な人工膜で覆います。骨が欠損した部分は、何もしなければ骨の再生よりも歯ぐきなどの軟らかい組織が入り込むスピードの方が速く、骨は十分に再生されません。
メンブレンは、この軟らかい組織の侵入を防ぐバリアの役割を果たし、骨をつくる細胞が優先的に増殖できる空間を確保します。これにより、骨の再生を意図した方向へ導くことができるのです。
GBRによってインプラントを支えるのに十分な骨量を確保することで、適切な位置にインプラントを埋入でき、長期的に安定した状態を保つことにつながります。
当院の院長・小沼は日本口腔インプラント学会の専修医です。
インプラントの骨造成は術者の技術と知識と経験が大きく影響します。
骨の量が少なくインプラントは難しいと言われた方はぜひ一度LUSIAへご相談ください
骨造成(GBR)の主な種類

GBRには、患者さまの骨の欠損状態や治療計画に応じて、主に2つの方法があります。インプラントを埋め込む手術と同時にGBRを行うのか、あるいはGBRを先に行ってからインプラントを埋め込むのか、そのタイミングによって「段階的GBR」と「同時GBR」に分けられます。
段階的GBR
段階的GBRは、はじめにGBRの手術だけを単独で行い、骨の再生を待ってからインプラントを埋入する方法です。骨の吸収が著しく、インプラントを埋め込んでも初期の安定性が得られないと判断されるような、骨の不足が大きい症例に適用されます。
GBRによって骨の再生に必要な環境を整え、約6~8ヶ月ほどの治癒期間を設けます。骨が十分に再生され、インプラントを支えられるだけの強固な土台ができたことを確認した後に、改めてインプラントの埋入手術に進みます。
治療期間は長くなりますが、骨の量が大幅に不足している場合でも、安全かつ確実にインプラント治療を行うためのアプローチです。
同時GBR
同時GBRは、インプラントを埋め込む手術とGBRを一度に行う方法です。骨の不足が比較的軽度から中等度で、埋入したインプラントがある程度の初期固定を得られる(ぐらつかずに安定する)場合に選択されます。
具体的には、インプラントを埋入した際に、インプラントの一部が骨から露出してしまう部分を骨補填材で覆い、メンブレンを設置します。手術の回数が1回で済むため、段階的GBRに比べて患者さまの身体的な負担が少なく、治療期間全体を短縮できるという利点があります。
抜歯と同時に骨を守るリッジプリザベーション

歯を抜いた後、歯が埋まっていた部分の骨は時間の経過とともに吸収され、徐々に痩せていってしまいます。この骨の吸収は、将来的にインプラント治療を検討する際に、GBRが必要になる原因の一つです。
リッジプリザベーション(歯槽堤保存術)は、こうした抜歯後の骨吸収を最小限に抑え、骨の高さや幅をできるだけ温存するために行う予防的な処置です。具体的な方法は、抜歯した直後の穴(抜歯窩)に、骨の再生を促す骨補填材などを詰めます。これにより、骨が痩せて陥没するのを防ぎ、同時に歯ぐきの形の維持も期待できます。
GBRがすでに失われてしまった骨を「増やす」治療であるのに対し、リッジプリザベーションは、これから失われるであろう骨を「守る」ための処置です。
抜歯の段階でこの処置を行っておくことで、将来のインプラント治療はもちろん、ブリッジや入れ歯を作製する際にも、より審美的で機能的な仕上がりが期待できるというメリットがあります。
他院で「抜歯しかありません」と言われた方へ|抜歯前に知っておくべき選択肢

他の歯科医院で「抜歯が必要です」と告げられたとしても、すぐに諦める必要はありません。歯の状態によっては、ご自身の歯を残せる可能性が残されている場合があります。
抜歯はあくまで最終的な手段であり、その決断を下す前に、別の治療法がないかを確認するためにセカンドオピニオンを求めることも有効な選択肢です。
再生療法による歯の保存可能性
抜歯が検討される主な理由には、重度のむし歯や歯周病による骨の破壊、歯の破折などがあります。しかし、特に歯周病によって歯を支える骨が溶かされてしまった場合でも、抜歯を回避できる可能性があります。それが「歯周組織再生療法」です。この治療法は、インプラントのためのGBRとは異なり、ご自身の歯そのものを救うことを目的とします。
歯周組織再生療法では、歯の根の周りにエムドゲインやリグロスといった特殊な薬剤を塗布することで、歯周病で失われた歯槽骨や歯根膜などの歯周組織の再生を促します。歯の周りの骨を回復させることで、ぐらつきを抑え、再び歯を機能させることができる可能性があります。
実際に、この治療法によって抜歯を免れた症例も数多く報告されています。もし抜歯以外の選択肢を探しているのであれば、ご自身の歯を残すための再生療法について、一度ご相談ください。
骨造成(GBR)の症例写真

術前

術後

術前

術後
治療内容 | 骨造成(GBR)とインプラント |
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治療期間 | 1年 |
合計金額(税込) | 75万円(GBR 15万、インプラント埋入50万、FGGによる歯肉再生術10万) |
リスク・副作用 | 術後に腫張、疼痛、出血上顎洞炎、鼻出血等が起きる可能性があります。 |
治療の流れ

GBRを含めたインプラント治療は、精密な診断と計画に基づいて段階的に進められます。ここでは、カウンセリングから最終的な人工歯の装着までの一般的なプロセスをご紹介します。
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Step1:CTによる精密検査・カウンセリング
治療を始める前に、患者さまのお悩みやご要望を詳しくお伺いするカウンセリングを行います。その後、CT撮影による精密検査を実施します。CTでは、お口の中を立体的な画像として確認でき、顎の骨の量や厚み、質などを詳しく把握することが可能です。併せて、お口の中にむし歯や歯周病がないかもチェックします。
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Step2:GBR|メンブレンと骨補填材で骨の再生を促す
GBRは、骨の状態に応じて2つの方法に分けられます。同時GBRでは、インプラント埋入とGBRを同時に行います。局所麻酔下で歯肉を切開し、インプラントを埋入した後、はみ出した部分に骨補填材を詰め、メンブレンで覆って縫合します。
段階的GBRでは、GBRのみを先行して実施します。歯肉切開後、骨欠損部に骨補填材を充填し、メンブレンで保護して縫合します。
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Step3:骨の再生を待つ治癒期間|安定するまでの過ごし方
GBR手術後、骨が十分に再生されるまでには、骨の欠損状態や個人差にもよりますが、一般的に約6~8ヶ月ほどの治癒期間が必要です。この期間は、インプラント治療の土台となる丈夫な骨をつくるための大切な時間です。
手術した部位に強い刺激や圧力がかからないように、硬い食べ物を避けたり、舌で触ったりしないよう注意して過ごしていただく必要があります。また、感染を防ぐために処方された抗菌薬をきちんと服用し、歯科医師の指示に従ってお口の中を清潔に保つことが、順調な治癒につながります。
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Step4:インプラント埋入と人工歯(上部構造)の装着
骨が十分に再生され、インプラントをしっかりと支えられる状態になったことがCT画像などで確認できたら、次のステップに進みます。段階的GBRの場合は、ここでインプラントの埋入手術を行います。同時GBRの場合は、すでにインプラントは埋入されています。
インプラントと顎の骨が完全に結合した後、インプラント体の上に「アバットメント」と呼ばれる土台部分を連結します。最終的にその上にセラミックなどで作られた人工歯(上部構造)を装着して、一連の治療が完了となります。