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歯周病と全身疾患
2026/01/13
― 「健康」は「健口」から ―
LUSIA DENTAL CLINIC 患者さん向けコラム

① 歯周病は「お口の病気」だけではありません
歯周病というと、「歯ぐきが腫れる」「歯がグラグラする」といったお口の中だけの病気だと思われがちです。しかし現在では、歯周病は全身の健康に影響を及ぼす慢性炎症性疾患であることが、数多くの研究によって明らかになっています。
歯周病は、歯周病菌による感染と、それに対する体の免疫反応によって歯ぐきや歯を支える骨が破壊される病気です。進行すると歯周ポケット内では慢性的な炎症が続き、細菌や炎症性物質が血流に乗って全身に影響を及ぼすと考えられています。
これまでに、歯周病は以下のような全身疾患との関連が報告されています。
- 糖尿病
- 心筋梗塞・脳梗塞などの心血管疾患
- 誤嚥性肺炎・肺炎
- 早産・低体重児出産
- 動脈硬化
- 骨粗鬆症
- 関節リウマチ
つまり歯周病は、「歯を失う病気」であると同時に、全身疾患のリスクを高める可能性がある病気なのです。
② なぜ歯周病が全身に影響するのか?
歯周病が全身疾患と関連する理由は、大きく分けて2つあります。
(1) 歯周病菌が血管内に侵入する
歯周病が進行すると、歯ぐきの内側には潰瘍のような状態が生じます。その面積は、重度歯周病では手のひら大にも相当すると言われています。ここから歯周病菌が血管内に侵入し、全身を巡ることで、心臓や血管、肺、胎盤などに影響を与える可能性があります。
(2) 慢性的な炎症が全身に波及する
歯周病では、IL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインが多く産生されます。これらは血液を介して全身に広がり、
- インスリン抵抗性の悪化
- 血管内皮障害
- 動脈硬化の促進
などを引き起こすと考えられています。
この「慢性炎症」こそが、歯周病と多くの全身疾患をつなぐ重要なキーワードです。

③ 歯周病と糖尿病 ― 双方向に悪影響を及ぼす関係
歯周病と全身疾患の中でも、特に関係が深いのが糖尿病です。両者は「一方通行」ではなく、お互いに悪影響を及ぼし合う双方向の関係にあることが分かっています。
● 糖尿病が歯周病を悪化させる
糖尿病では高血糖状態が続くことで免疫機能が低下し、細菌感染に対する抵抗力が弱くなります。その結果、歯周病が重症化しやすくなり、治療後の治癒も遅れがちになります。
● 歯周病が糖尿病を悪化させる
一方、歯周病による慢性炎症はインスリンの働きを妨げ、血糖コントロールを悪化させます。歯周病治療を行うことでHbA1cが約0.3〜0.4%改善したという報告もあり、これは糖尿病治療薬1剤分に匹敵すると言われています。
このように、歯周病と糖尿病は負のスパイラルに陥りやすいため、歯科と内科の連携が非常に重要です。
④ 心血管疾患・脳梗塞との関係
歯周病は、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患とも関連があるとされています。歯周病菌が血管内に侵入すると、動脈硬化の形成を促進し、血管が狭く・硬くなる原因となります。
また、歯周病による慢性炎症は、血栓形成を促す方向に働くことが報告されており、これが心筋梗塞や脳梗塞のリスク上昇につながると考えられています。
⑤ 誤嚥性肺炎・高齢期の健康との関係
高齢になると、飲み込む力(嚥下機能)が低下しやすくなります。その際、お口の中の細菌が唾液とともに肺へ入り込むことで起こるのが誤嚥性肺炎です。
歯周病や口腔内清掃不良があると、肺炎の原因菌が増えやすくなります。実際に、定期的な口腔ケアによって肺炎発症率や死亡率が低下したという研究報告もあり、高齢期における歯科メンテナンスは命を守る医療とも言えます。
⑥ 妊娠・出産への影響
歯周病は、早産や低体重児出産との関連も指摘されています。歯周病による炎症性物質が血流を通じて子宮に影響を与え、陣痛を誘発する可能性があると考えられています。
妊娠中はホルモンバランスの変化により歯周病が悪化しやすいため、妊娠前や妊娠中の歯科受診・メンテナンスが重要です。
⑦ 歯周病治療・メンテナンスが「全身の治療」になる理由
歯周病は、適切な治療と継続的なメンテナンスによってコントロール可能な病気です。
歯科医院で行う定期的なメンテナンスでは、
- 歯周病菌の量を減らす
- 炎症を抑える
- 正しいセルフケアを身につける
ことを継続的に行います。
その結果、
- 糖尿病の血糖コントロール改善
- 心血管疾患リスクの低下
- 誤嚥性肺炎の予防
といった全身への良い影響が期待できます。
⑧ 生涯の健康と医療費を守るために ― メンテナンスという選択
定期的な歯周病メンテナンスは、長期的に見ると医療費の抑制にもつながります。
- 歯を失えば、インプラントや義歯など高額な治療が必要になる
- 全身疾患が進行すれば、通院や入院が必要になる
一方で、歯周病を早期から管理していれば、
- 歯を長く保てる
- 全身疾患の重症化を防げる
- 健康寿命を延ばせる
という大きなメリットがあります。
LUSIA DENTAL CLINICが「治療が終わったら終わり」ではなく、メンテナンスを重視している理由はここにあります。
まとめ
歯周病は、お口の中だけの問題ではありません。全身と深くつながり、糖尿病や心血管疾患、肺炎、妊娠・出産にまで影響を及ぼす可能性があります。
しかし逆に言えば、歯周病を適切に管理することで、全身の健康を守ることができるということでもあります。
定期的なメンテナンスは、将来の自分への投資です。
LUSIA DENTAL CLINICは、患者さん一人ひとりの「生涯の健康」を支えるパートナーとして、これからも寄り添い続けたいと考えています。
参考文献・エビデンス
- 日本歯周病学会:歯周病と全身の健康に関する見解
- World Health Organization (WHO):Oral health and systemic health
- Preshaw PM et al. Periodontitis and diabetes: a two-way relationship. Diabetologia
- Tonetti MS et al. Impact of periodontal therapy on systemic health. J Clin Periodontol
- Scannapieco FA. Periodontal disease and pneumonia. J Periodontol
- Offenbacher S et al. Periodontal disease and adverse pregnancy outcomes. Ann Periodontol